社会学備忘録

社会学と将棋が好きな大学生のつぶやき

ガブリエル・タルドについて

 ガブリエル・タルドという名の社会学者をご存じだろうか。彼は19世紀末~20世紀初頭にかけてフランスで活躍した社会学者・犯罪学者である。時代は、社会学の祖とされるオーギュスト・コントの時代から、生物学的・進化論的な社会現象の説明という過程を経て、科学として社会学をうちたてようという機運が高まっていた頃であり、タルドもその雰囲気の中で独自の社会観・社会学理論の構築に励んでいた。そして、パリ社会学会の初代会長を務めたり、コレージュ・ド・フランスにおいて社会学の講義を行った。また、エミール・デュルケムとの有名な論争は、「社会とは何か」「社会と個人の関係を社会学はどのように捉えるべきか」といったテーマをめぐって、対照的な立場の二人が双方の理論の瑕疵・矛盾を批判したものであり、社会学の方法論をめぐる議論として興味深いものである。

 しかし、そんな華々しい活躍をしていたタルドの名前は、今日の社会学系統の文献において引用・参照されることは殆どないと言っても過言ではない(現在、タルド研究自体は邦訳の刊行をはじめとして、国内外で着々と進行中である)。そんな「忘れられた社会学者」の思想・理論の紹介、および今日的な意義について、当面はささやかな雑記という形で書き記していくつもりである。